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Brexitの今と、個人的に大切だと思う3つのこと

イギリスでは、明日12月11日はとても大切な決定がある日です。それは欧州連合EU)離脱協定案の下院での採決。この「EU離脱協定案」というのは、いわゆるイギリスとEUが結婚関係を解消して、別の道を歩んで行く上の契約書のようなものです。この契約書はお互いなるべく傷つけあわず、「円満離婚」をするために必要なのです。

協定案は、

①11/14 イギリスの閣議決定←済

②11/25 EU欧州理事会可決←済

③12/11イギリス議会可決←いまここ

EU欧州議会可決

EU欧州委員会承認

をもって、2019年3月の「EU離脱移行期間開始日」を迎えます。つまりイギリスがEUという家を出て、引っ越しを始める日です。

 

もし明日③が否決されれば、メイ首相率いる政府は21日以内に別の「EU離脱協定案」を提出し、①~⑤のステップを再チャレンジすることになります。しかし、このチャレンジの道は厳しく、合意のないまま3月29日を迎える可能性が高まります。「合意なき離脱」は経済のさらなる不安定化を招き、危険視されています。

 

そんな日を前にしたイギリスで、Brexitの話題はとにかく毎日毎日。BBCでも街中でも膨大な議論がされています。しかしこれまでのEUの歴史やイギリス政治のしくみの構造はとてもややこしい。まだまだ分からないことだらけですが、個人的に大切だと思うことは3つです。

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①イギリスはEUのなかで一匹狼。遅かれ早かれ、「ヨーロッパ」とは別の道を行くつもりだった。

 

世界史においてもイギリスは「光栄ある孤立(Splendid Isolation)」を叫んできた国。島国であることを発端に、大陸ヨーロッパとはちがう!という意識を強くもってきました。1930年、ウィンストン・チャーチル首相は「私たちはヨーロッパと共にあるが、ヨーロッパではない(We are with Europe, but not of it.)」と発言したそうです。

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PA/PA Archive/Press Association Images

そして、1973年に欧州経済共同体(EEC)発足から15年遅れてEUに加盟した後も、シェンゲン協定非加盟、ユーロ加入原則適用除外、リスボン条約の「警察と司法の統合強化」条項適用除外など、数々の例外を求め、そのほとんど認められてきました。いわば、クラスのなかで「一目おかれた存在」で、「みんなはこうすることになったけど、イギリス君はやらなくていいよ」ということが当たり前でした。

 

EUがどんどん結びつきを強め、EUの権利>>国の主権という状況が作られていったら…。「イギリス君はやらなくていいこと」がどんどん増えて、もはやクラスにいる意味はなくなっていきます。政治家はEU離脱の日はいつか来ると思っていた。つまり、国民投票は実は、「EU離脱をすべきか/すべきでないか」というよりも、「いますべきか/あとですべきか」という決定だったとみることができそうです。

 

②イギリス国内で意見をまとめる「求心力」が必要である。

保守党党首のテレーサ・メイも、労働党党首のジュレミー・コービンも2016年の国民投票以来求心力を高められていません。EU離脱担当相をはじめとする閣僚、担当職員の辞任も相次いでいます。

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https://yougov.co.uk/topics/politics/articles-reports/2018/04/09/public-sees-theresa-may-more-favourably-jeremy-cor

下院での可決に必要な320票の獲得は「難しい」という見方が一般的です。理由は主に二つ。

1.メイ首相が代表する保守党から80-90議員の造反(協議案への反対)が予測される。

2.Brexitに伴って北アイルランド(英領)が恩恵にあずかれるような約束がされず、民主統一党DUP, 北アイルランド地域政党)の全10議員の反対が予測される。

 

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https://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-46254257

 

③イギリスは半世紀~1世紀かけて、新たな貿易関係を再構築していかなければならない。

離脱派が離脱理由に挙げていたものの一つとして、「EUとしての取り決めにとらわれず、各国と貿易協定を結ぶ自由を手にいれる」というものがありました。

 

しかし、今回の「離脱協定案」のとりまとめにこれだけてこずっています。これまでEUとして貿易関係のあった国と二国間関係を結びなおすのも長い長い道のりになります。

 

ブレクジット談義は2019年3月29日で終わることはなく、50年、あるいは100年かけて、イギリスの新しい貿易上の地位を築いていく必要がありそうです。

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このように一日の、そしてたった2%という僅差の国民投票は、イギリスに計り知れないほど大きな影響をもたらしています。Bregret(Britain+Regret(後悔))が流行語になるほど、先行き不安のムードは強いです。それでも、一度決まったこと、すでに動きだしたことに対してcomplaint(不満=イギリスの国技とも笑)をしていても前に進めないと思います。その意味で、保守党の造反議員予測がこれだけ多いことは失望的です。

 

一国で世界と対峙することの責任と労力は非常に大きい、しかしその一方で、これまでになかった貿易や取引を「フットワーク軽く」実現していけることは期待されます。これまで貿易関係の薄かった発展途上国とリスクをとって貿易を開始する、EU-アメリカ-アジア-アフリカそれぞれからの独立を特徴とした金融取引のハブをつくるなど。保護主義に陥らず、「オープン」であり続けることで新しい貿易スタイルが築けるのではと期待しています。

堅いテーマにかかわらず、読んでくださりありがとうございます。

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